ひっくり返った勿忘草

 

小さな青い花に
幼い頃は見蕩れていた

 わたしを忘れないでください

勿忘草が泣き喚く
耳障りなそよ風を払いのけて
その小さな花を引きちぎった

ひっくり返して揺らせば

 あなたを忘れさせてください

勿忘草が嘲笑う
心地よい追い風に急かされて
その小さな花を手放した

どこまで飛んで行こうか
きっと数メートル先に
地獄が待っている

 わたしを忘れないでください

勿忘草が啜り泣く
きっとそれは
早く忘れられたいからこその
嘆きだったのでしょう

ありったけの勿忘草を
空から逆さまに咲かせて

 あなたを忘れさせてください

鱗雲から一筋だけ
生温い雨が落ちてきた

22.11.28

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